インド進出を目指す企業のビジネスパートナー、マーケティングリサーチ&コンサルティングならインフォブリッジへEN

~インドモビリティ市場~若者層を中心に浸透・拡大が進むシェアリングモビリティ、自動車メーカーもこれらソリューションへの取り組みを始めている

市場規模・動向

慢性的な渋滞や駐車場不足により、自家用車の消費者層が減少、メトロなどの公共交通機関やカープールなどのサービスを利用する層が増えている。自家用車の利用用途は通勤手段ではなく週末の家族旅行のためであり、都市計画は車依存から脱却し、自転車・公共交通機関にシフトするべきだという専門家の意見もある。

中国の自動車コンサル企業Zozo goによると、ニューヨークとサンフランシスコでは、約半数の市民が自家用車を保有していないという。中国は25歳以下の運転免許保有者の割合はここ十年で28%にまで縮小。ドイツのBerylls Strategy Advisorsによると、アメリカの新車販売は、2030年には12%減の1,510万台にまで落ち込むという。この流れを読み、自動車各社はモビリティ企業への出資を始めており、GMは米Lyftに、トヨタはシンガポールGrabに、BMWは独DriveNowに出資している。

インドにもこの風潮は広がっており、マルチ・スズキ、マヒンドラ・アンド・マヒンドラが若者の新車購入意識の低下に懸念を表明している。2016年には、2020年には国内新車販売台数は500万台に到達するといわれていたが、2013年の250万台から2017年は320万台にしか伸びておらず、2018年7~9月は3か月連続で販売台数が縮小している。特に大都市圏では、大気汚染の深刻化、通勤時間の長期化などが顕著に進んでいる。デリーの駐車料金は5年前の4時間20ルピーから1時間20ルピーに値上がり。ベンガルールでは10年前は45分で到着できた距離が、現在は2時間以上かかるという。デリーとムンバイでは、自家用車の保有人口は人口のわずか10%にも関わらずこうした問題が慢性化している。

この現状を受け、若者層を中心に意識の変化が起こっている。2013年創業のレンタカー企業Zoomcarは現在38都市に6千台を所有。利用者層は30代以下の層が最も多くを占めている。若者層は所有欲よりも経験に重きを置き、価格ではなく利便性と柔軟性を重視するという。配車サービスも活況だ。Ola、Uberの1日あたりの利用客数は2015年時点の100万人から2018年には350万人に伸びている[i]

乗用車は、エネルギー消費量も公共交通に比べ格段に大きい。モビリティ別の1km走行あたりのエネルギー消費量(キロジュール、以下KJ)は、自家用車はデリーメトロの22倍、AC付バスの約8.7倍と効率が悪い[ii]

交通渋滞による経済損失は年間200億米ドルとも言われており、今後十年間で都市部における人口は6億人と倍増、1日あたりの移動人数は5億人に到達するとみられている。大気汚染、化石燃料、交通渋滞、エネルギー消費量などの観点からみても、モビリティに対する適切な解決策の確立が急務となっている[iii]

企業動向

下記にインドのモビリティ市場の主要企業を挙げる。

・Super Highway Labs

2015年創業、グルガオン拠点。バス配車サービス「Shuttl」を展開する[iv]。アプリで乗降駅を選択し、事前予約。支払いもアプリ内で行う仕組み。対象地域はデリー首都圏とコルカタで、60路線以上を運行、保有車両は620台。利用客数は1日3万人を超える。2018年4月には予約件数が1千万件を突破。1回の輸送での平均利用人数が二輪車は1.2人、四輪車2.2人に対しバスは20人。デリーでは輸送需要の60%をバスが担えるという[v]

・BlaBlaCar[vi]

フランス拠点のライドシェアプラットフォーム。22か国で展開、3か月間の利用客数は1,200万人に上り、毎年200億ルピーの経済効果、100万トンのCO2削減を達成している。1回あたりの平均乗客数は2.8人、アプリのダウンロード件数は3千万件に上る。インドにはアジア初進出として2015年に参入。利用件数は参入後1年半で300万件を突破している。利用客層は35~38歳のビジネスマンが多いという。欧州では電車よりも割安な価格設定で、インドでもベンガルール・チェンナイ間が鉄道だと700~800ルピーに対し同社サービスは650~700ルピー。電車ではキャンセル待ちがしばしば発生する一方で、ライドシェアは利用直前まで予約可能な点も強みだ。同社によると、ライドシェアで年間5万ルピーのガソリン代を削減できるという。利用者の政府発行の身分証明書の確認義務付け、女性利用者は女性ドライバーを選択できるなど、安全面にも配慮している[vii]

・Vogo

2016年創業、ベンガルール拠点。スクーターのレンタルサービスアプリ「Vogo」を展開する。対象地域はベンガルールとハイデラバード。携帯アプリで車両のピックアップおよびドロップポイントを選択、携帯に送信されるOTPを入力し、ピックアップポイントから乗り降りする仕組み。2019年中に2都市での車両台数を500台、ピックアップポイントを1千カ所にまで増やす計画。今後1年間で利用客数10万人突破を目標に掲げている。2018年4月には、Ola、二輪大手Hero Moto Corpの会長などから増資を受けており、金額は公開されていないがOlaからの調達額は500~700万米ドルとみられている[viii]

・Drivezy India Travels

2015年創業、ベンガルール拠点。1万5千台のバイク、4千台の自動車の貸主と、借り手をつなぐプラットフォームを運営。車両を自社保有しない代わりに、オーナー個人、資産管理会社、車両オペレーター、自動車ディーラーと契約を結ぶ。借り手は携帯アプリまたはウェブサイトから予約、最大30日間までのレンタルが可能だ。ムンバイ、ベンガルール、デリーなど11都市にピックアップドロップ拠点を150展開。競合はセルフドライブレンタル事業を手掛けるスタートアップ、ZoomcarやRevvなど。2019年7月にはフランチャイズサービスを発表、約2,800万ルピー相当の自動車(二輪、四輪)を、最大3年間貸し出すサービスだという。同社が顧客管理、インフラ整備、マーケティング、ブランディング、カスタマーケアを行い、フランチャイジーはDrivezyに1予約につき25%の手数料を支払う。今後1年間で21都市で100カ所のフランチャイズユニットを作る計画で、スタッフ教育なども含め総投資額は150万米ドルに上る。総流通総額(GMV)は400万米ドルに到達している[ix]

・Wicked Ride

2014年創業、ベンガルール拠点のスクーターのレンタルサービスアプリ「Bounce」を展開する。2018年10月からドックレススクーターを導入し、10か月で1日の利用件数6万件(うちドックレスは7千件)に到達した。累計利用件数は500万件、走行総距離は3千万kmにおよぶ。アメリカのスクーターレンタル「Lime」や「Bird」などと同等の規模で、世界で最も成長速度のはやいスクーターレンタル企業となった。ベンガルールの都市交通局によると、2018年時点で乗用車の登録台数は760万台。一方、ラストマイルの交通手段としてのバイクシェアリングの台頭で、公共交通機関の利用率が向上したという。1回利用あたりの平均走行距離は7~8km、1kmあたり5ルピーと割安な価格設定も奏功している。利用者のうち25%は女性だという。2019年内にさらに5万台を導入する計画だ[x]

現地消費トレンド

・2018年11月、ハリヤナ州政府は、公立学校に通う女子生徒に対しカープールサービスを開始した。安全面の懸念を理由とする退学の阻止が目的。家族や保護者が負担する送迎費用を州政府が払い戻す仕組みで、対象は9年生(中学校)以上または理系の11年生以上で、家の3km圏内に学校がないこと、出席率60%以上であることが条件。SUV、オートリキシャ、ミニバスなどの車両が補助金対象となる。車両と運転手は交通当局からの証明書の交付が必要で、運転免許証、車両保険などの書類提出が必要となり、定員以上の生徒を乗せてはいけないという決まりもある[xi]

・2018年11月、プネに都市交通を研究開発する「Urban Mobility Lab」がオープンした。プネ自治公社、米ロッキーマウンテン研究所、8社の自動車メーカーの共同事業で、全国に先駆けた取り組みとなる。プネの後、ムンバイ、ハイデラバード、ビシャカパトナム、コチ、ベンガルールにも展開される予定。研究所では、交通および駐車場管理、非動力式輸送、公共交通、予約支払システム、電気モビリティサービスなどの分野で研究およびソリューションの開発を行う。プネは人口よりも登録車両台数が多いとも言われており、革新的な開発が期待されている。ベンガルール拠点の充電インフラメーカーSun Mobilityは2019年にプネ市内に電動二輪および三輪自動車用のインフラ施設の建設を明言、ノイダ拠点のEV車両オペレーターLithium Urban Technologiesは今後1年でプネ市内に300台の電気自動車、50台の電気バスを投入する。公共交通機関の支払アプリRidlrも今後1年以内にプネ市内で事前予約およびキャッシュレスペイメントサービスを開始すると発表している[xii]

・マルチ・スズキはインドのシェアモビリティ市場に投資する[xiii]。モビリティーテクノロジーを取り扱う部署を新設、配車サービスに適した装備の車両開発などを手掛ける。親会社であるスズキもベンガルールに事務所を新設、シリコンバレーで働いていた従業員もおり、モビリティ市場のスタートアップと協働を進めるという。2018年8月にはヒュンダイがカーシェアリングプラットフォームを運営するRevvに10億ルピーを出資、さらに2019年3月にはヒュンダイとKIAモーターが地場配車大手Olaに3億米ドルの出資を発表している。2018年10月にはタタモーターズが「Mobility Innovation Hub」を新設、乗用車および商用車市場におけるシェアモビリティソリューションの開発を行っている。マッキンゼーによると、シェアモビリティの台頭で、2030年までに全世界の約3分の1の新車販売が影響を受けるという。一方で新興国においては、今後15年間は新車販売の成長がシェアモビリティを上回るとみられている。スタートアップとの協働を模索する大手メーカーも多いものの、リスクが伴うため、適切なスタートアップ選定が難しいのも現状だ。各社は専門部署を設置し、事業加速を図る。


[i] https://economictimes.indiatimes.com/industry/auto/auto-news/how-car-ownership-is-changing-rapidly-and-irreversibly-in-india/articleshow/66296079.cms

[ii] https://www.entrepreneur.com/article/312228

[iii] https://www.entrepreneur.com/article/312228

[iv] http://newsroom.shuttl.com/about/

[v] http://www.motorindiaonline.in/buses/shuttl-indias-largest-bus-aggregator-platform/

[vi] https://blog.blablacar.in/about-us

[vii] https://yourstory.com/2016/08/blablacar/

[viii] https://economictimes.indiatimes.com/small-biz/startups/newsbuzz/scooter-sharing-platform-vogo-raises-funding-from-ola/articleshow/65395579.cms

[ix] https://www.livemint.com/companies/start-ups/drivezy-crosses-4-million-in-monthly-gmv-launches-franchise-business-1563366421273.html

[x] https://www.business-standard.com/article/companies/bengaluru-s-bounce-becomes-world-s-fastest-growing-bike-sharing-start-up-119073100559_1.html

[xi] https://www.hindustantimes.com/india-news/haryana-education-department-starts-carpool-to-provide-safe-travel-for-girl-students/story-8O9k9RrEmyvdymrJQ2YGDM.html

[xii] https://www.financialexpress.com/industry/urban-mobility-lab-think-do-tank-plans-major-makeover-for-punes-transportation/1378884/

[xiii] https://www.livemint.com/auto-news/maruti-suzuki-scale-up-their-bets-for-a-shared-mobility-ride-1556478160056.html