コラム

インドのEコマース市場 ~若者のネット利用で拡大、日系による投資も相次ぐ~

Published on
Jul 9, 2018


市場規模

インドの電子商取引(eコマース)市場規模は2014年時点で140億米ドル規模。2017年には2.5倍以上の390億米ドルに到達、今後も好調に推移し2026年には2,000億米ドル規模になると見込まれている。

                                【インドのeコマース市場規模推移】 (注1

市場をけん引するのは、インターネットの普及だ。インターネットの普及率は2007年時点のわずか4%から2016年には34.8%まで増加しており、その成長率は89%に上った。インドの都市部人口約4億4400万人のうち、60%超の2億6900万人がインターネット接続環境下にある。農村部人口約9億600万人のうち、インターネット人口は約17%の1億6300万人と都市部よりは低いものの、今後の成長が期待されている。都市部・農村部とも、最もインターネットを利用している層は若者となっている。

                                                                                                             【インターネット普及率推移】(注1

市場動向

eコマースの流通総額(Gross Merchandise Value、以下GMV)は2017年時点で178億米ドル規模。2018年には60%増の280億~300億米ドルまで伸びる見込みだ。2016年のGMV内訳で最も多いのはエレクトロニクスで47%。同カテゴリーは2020年まで年平均43%で成長するとされている。2番目に多いのはアパレルで31%、家具8%、書籍7%と続く。1日当たりの取引件数は100万~120万件となっている。

                                                                                                           【eコマースのGMV内訳】(注1

旺盛な需要と商機を見込んでインドのeコマース企業には大型投資が相次いでいる。2017年1~9月の投資額は前年同期比約2倍の96億米ドルだった。特にスタートアップ企業への投資が目立ち、2017年上半期は1億米ドル以上を調達したスタートアップが26社、その合計額は77億米ドルに上っている。

                                                                                                           【インドeコマースへの主要投資案件】(注1

企業動向

下記にその他の主要なeコマースサイトの概要を挙げる。近年では総合サイトの他に、特定商品に特化したサイトも台頭している。

FLIPKART

2007年に開設の総合 eコマースサイト。バンガロール拠点。現在80以上のカテゴリーで、8,000万以上の商品を抱える。2012年には、電化製品に特化したeコマース「Letsbuy.com」を推定2,500万米ドルで買収・統合、主力カテゴリーを強化し年間売上高約1億米ドルを達成した。2013年度は約2億米ドルという多額の損失を計上しながらも、2014年、ファッション特化型eコマース「Myntra.com」を過去最高額の推定約4億米ドルで買収。2016年に登録ユーザー数は1億人に到達し、アプリユーザー数も5,000万に到達した。2018年7月、金融サービスにも参入する方向であることを発表。すでにノンバンク金融(NFBC)許可の申請プロセスに入っており、また保険会社とのパートナーシップによるマイクロ保険商品の開発も視野に入れている、という。(注2-1)(注2-2

AMAZON

米国eコマース大手。ムンバイ拠点。正式参入は2013年。インドはAmazonの進出国として10番目で、国内小売業者約100社と契約を結び、700万冊の国内外の書籍や1万2000本以上の映画DVD・ブルーレイディスクの販売を開始した。同年10月には、おもちゃ・ゲーム、ベビー用品、パーソナルケア用品、健康機器の取り扱いも開始するなど、総合eコマースとして順次カテゴリーを拡大。2017年1月現在、セラー(出店者)数は34万、約9,500万点の商品を扱い、インド最大級のオンラインマーケットプレース型eコマースとなっている。2016年7月にAmazon Primeを年間499ルピーでローンチ(現在は年間999ルピー)、インド向けコンテンツの充実のため、2017年に入り約3億USDを投資した。会員数(実数は不明)は順調に伸びており、2017年10月時点でPrime対象商品は1,100万点にのぼり、その利用者の40%はPrimeユーザーという。また、2018年6月にはセラー向け金融サービスの提供も開始、Yes Bank, Bank of Barodaなどの銀行の他、ノンバンク金融会社等ともパートナーシップを組み、より簡易に有利な金利でローンが借りられるような仕組みを提供するなど、サービス拡充を図っている。(注3-1)(注3-2)(注3-3)(注3-4

SNAPDEAL

2010年2月開設の総合eコマースサイト。運営企業はグルグラム本社のJasper Infotech。800以上のカテゴリーで12万5000ブランド/3,500万点以上の品目を取り扱う。出店数は30万社以上、配達地域は6,000都市を超える。ソフトバンクを筆頭に、米BlackRock、シンガポールTemasek、台湾Foxconn、中国Alibaba、米eBay、米Intel Capital、米Bessemer Venture Partners、国内からもPremji Invest、タタ・グループの会長だったラタン・タタ氏などから投資を受けている。(注4

FIRSTCRY

ベビー用品に特化したeコマースサイト。運営企業はプネーが本社のBrainBees Solutions。2,000以上のブランド、20万点以上の商品を取り扱う。出店数150社、登録会員数は200万人以上、500ルピーの買い物で配達料が無料となる。2018年1月にはAlibabaが同社傘下の物流企業XpressBeesに22億4000万ルピー(約3,500万米ドル)を投資している。(注5-1)(注5-2

1MG

医薬品に特化したeコマースサイト。運営企業はグルグラムが本社の1mg Technologies。ヘルスケア商品全般を取り扱うeコマースサイトHealthkartから2015年に独立した。1mgは医薬品の販売だけでなく、インターネットを介した医療診断サービスも提供している。全ての人に医薬品を安価で簡易に提供することを目的としており、保健家族福祉省にも認定されている。アプリケーションのダウンロード数は600万件以上、年間アクセス数は8,000万件を超える。(注6-1)(注6-2

LENSKART

2010年開設、アイウエアに特化したeコマースサイト。インドでは1億5300万人に眼鏡や視力矯正が必要とされているが、十分に行き渡っておらず、インドにおける検眼医の需要4万人に対し実際は8,000人と不足しているという。同社は眼鏡を必要とする人々に安価で高品質な商品を提供することを目的とし、小売業者をなくし、ロボット主導の自社工場で生産後、顧客に直接配送するビジネス形態で生産にかかるコストを削減。職人技に依存しないことで、商品の品質担保も実現している。商品数は5,000モデル以上と、通常のリテール店舗の約5倍。価格帯も345ルピーから3万ルピーまでと幅広い。1日当たりの取引件数は開設初期の30件から現在は100倍の3,000件にまで伸びている。(注7

現地消費トレンド

・69回目となった2018年1月26日のインド共和国記念日におけるeコマース各社のセール商戦で、取引件数のトップはAmazonだった。2位のFlipkartと2倍以上の差をつけた。Amazonは同月20~24日、Flipkartは同月21~23日の期間でセールを開催。Amazonは2017年の同時期のセールにおいても、前年比200%の売り上げを達成している。2018年は同時期の新規顧客獲得数が1.7倍に上り、ヒンズー教の新年を祝うディワリの時期の商戦に次ぐ獲得数となった。新規顧客のうち、85%が中小都市圏からだったという。(注8

・Amazonは、インドの食品eコマース市場に参入する。2018年3月からのサービス開始が見込まれており、インド政府から5億米ドルの投資計画の承認を得た。既に小売り大手Big BazaarおよびFood Bazaarと提携した食品・グロッサリーのホームデリバリー・アプリケーション「Amazon Now」が展開されているが、新たに自社でインド産の食品を調達、保管、配達を手掛ける計画だ。また、Alibabaは、インド地場のインターネット食品スーパーのスタートアップ企業BigBasketの株式35~40%を3億米ドルで買収する手続きを進めている。Flipkartの同市場参入も見込まれており、eコマースの中でも特に食品関連は、注目度が高まっている(注9

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