コラム

インドモビリティ市場―販売状況と新たなトレンド

乗用車・二輪車販売状況 新型コロナウイルスは、インドの自動車市場にも例外なく影響を及ぼしているが、4月の国内販売台数ゼロから大きく回復、8月にはいずれも前年同月比を超える数値を達成した。

Published on
Oct 12, 2020

乗用車及び二輪者の国内販売については、昨年度から伸びが鈍化傾向にあり、その背景として金融部門の信用不安による貸し渋りや、2020年4月からの新環境基準Bharat Stage 6に合わせた販売調整などが影響していたが[i]、それに3月のロックダウンによる工場・販売店閉鎖が重なり、2020年度の国内販売はここ数年で初めての前年割れ、乗用車は2015年度、二輪車は2016年度水準にまで落ち込んだ。

出典:SIAM発表データ[ii]よりインフォブリッジ作成

3月25日からのロックダウンの影響で、4月の国内販売は各メーカーゼロが報告された。しかしながら5月より徐々に回復が始まり、8月には両者とも前年同月比超え、9月も好調で、乗用車の国内売上は前年同月比を35%上回る数字となった。これは2018年9月の乗用車売上台数23万8,692台[iii]に対しても15%増であり、今後の大幅な回復を期待させる数字となった。

二輪車の国内販売は6月に急速に伸長。これは小都市および農村部の移動手段需要の増加が背景となっている[iv]。農村部は都市部に比べ、収入減などの影響が少なく、さらに今年度の作物収穫量が好調であることも購入促進の後押しになっているようだ[v]

出典:JETROビジネス短信[vi]、Autocar India[vii]、autopunditz[viii]、Rushlane[ix]よりインフォブリッジ作成

出典:JETROビジネス短信[vi]、Autocar India[vii]、autopunditz[viii]、Rushlane[ix]よりインフォブリッジ作成

通常インドでは9月以降の年末にかけ、フェスティバルシーズンの需要増が見込めるが、その販売に勢いのあるのがSUV、特にコンパクトSUVセグメントだ。5月の国内販売台数は、一般乗用車14,460台に対し、多目的乗用車(UV)はそれを上回る17,347台となり、急速な需要回復を見せた。フェスティバルシーズンに向けての投入車も多くがSUVだ。9月に発売されたトヨタ「アーバンクルーザー」[x]はコンパクトSUV、Kia「Sonet」[xi]はサブコンパクトSUV、MG「Gloster」はプレミアムSUV、自動車比較サイトCarDekhoに掲載された10月発売予定の12車種[xii]のうち、Audi 「Q2」「Q3」[xiii]、Renault「Kigar」[xiv]、Mahindra「e-KUV 100」の4車種はSUV、MahindraのSUV新世代「Thar」も10月2日に発売され[xv]、活況を呈している。

出典:JETROビジネス短信よりインフォブリッジ作成

二輪はバイクだけでなく自転車にも注目

4月には二輪各社、Ernst Young、HSBCなどのレポートでは、バス・メトロといった公共交通機関から二輪車への移行が進み、エントリーモデルの販売が伸びると予測しており[xvi]、デロイトが今年4-5月に実施した調査でも、消費者の77%が公共交通機関の使用を限定したい、という結果を発表する[xvii]中、公共交通手段の代わりとして、自転車の需要も急速に増加している。全インド自転車製造協会(All India Cycle Manufacturers’ Association)によると、6月の自転車売り上げは前年度比25%増[xviii]、それまでの年成長率5-7%から、現在15~20%の成長率に拡大したという[xix]。インド最大の自転車メーカーであるHero Cyclesでは需要が昨年より倍増、仏スポーツ用品デカスロン・スポーツ・インディアによると、同社サイトでの検索ワード1位が「Bike」であり、自転車の普及は新型コロナウイルス前の50%以上になるだろう、と回答している。同社の売上はこの好調を受け、7-8月の2か月間で50%以上増となったという。

その一方で、需要急増のタイミングが悪く、供給がうまくいっていない、という問題も起こっている。需要急増の時期はロックダウンの影響による物流の混乱が起きており、また工場も閉鎖。さらに、インドは自転車部品を年間約7,214万米ドル輸入しており、自転車パーツ100個のうち15個は主に中国からの仕入れといわれている。こういった材料仕入の滞りにより、一部生産が追い付かない状況となっている。

こういった状況の中、電気自転車・バイクのレンタルも大都市部で拡大している。電気自転車レンタルのスタートアップYuluは、すでに250のメトロ駅でサービスを提供[xx]、2020年8月にはグルガオンの不動産開発グループVakitaとの協業で、Vakitaの提供する住宅・タウンシップへの電気自転車供給を開始。すでに200台を設置、2021年までに500台に増加する計画だ[xxi]。同SmartBikeは今年、デリーの130地域にサイクルステーションを設置した。

AI・IoT搭載のEバイクを手掛けるスタートアップeBikeGOは2020年6月、電気自転車のサブスクリプション「Environ」プログラムを開始[xxii]。当プログラムはデリバリーサービス向けで1日80ルピー、3時間のフル充電で60-70km走行可能、積載重量は200kgまでとなっている。現在Zomato, Swiggy, Delhiveryといったフードデリバリー、ネットスーパーBigBasket等で利用され、インド7都市で稼働している。

インド製スポーツ型電気自転車も登場

Elektron Cycles:2012年創業、デリー拠点。最初のモデルm368は2016年にローンチ。その後改良を重ね2018年にm368+の販売を開始。現在では同モデルの他、Uni-M368+、M5Xの3車種を販売。金額は38,999~62,999ルピー。[1]

LightSpeed Mobility:2016年創業、アーメダバード拠点。クラウドファンディングで起業し、1年をかけて低価格の電気自転車を開発[xxiii]。現在はMTBタイプ、ファミリータイプなど、非電動も含め10車種を投入。電気自転車の金額は30,999~59,999ルピー[xxiv]。購入しやすいよう、頭金なしの3ヶ月~12か月のEMI(分割払い)も提供している。

Toutche Electric:2018年創業。マイソールに製造拠点、バンガロールにバッテリー・電子機器関連の技術拠点を持ち、100%インハウスでの開発・製造を行っている。Heileo M100, M200, H200の3車種。金額は47,405~57,900ルピー。現在は8都市のショップ、18都市のサービスネットワークを展開[xxv]

Coppernicus:バンガロール拠点。2018年に3年間の試作の末、「T3」を発売[xxvi]。中国Bafangの250Wモーターを使用、14Ahのリチウムイオンバッテリーパックを搭載。バンガロール、マンガロール、コチ、チェンナイ、ムンバイ、プネなど9都市に展開。

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