コラム

インドグリーンビルディング市場~環境対策、SDGS目標の推進とともに、徐々にではあるが確実に広がりつつある市場~

Published on
Apr 12, 2021

SDGsは、2015年9月に国連サミットで採択された国際目標であり、2020年より、2030年のゴールに向けての「行動の10年」が始まったことで[i]、日本も含む加盟国では具体的な取り組みに向けての活動が、各種メディアや報道で取り上げられる機会が増えてきている。

インドは国連加盟国であり、それらの中でも特に様々な課題を抱える国のひとつとして数えられ、現在のランキングは193か国中117位、そのスコアは100点満点中61.92(The Sustainable Development Reportのダッシュボード参照、2021年4月8日時点[ii])という状況にあり、改善の余地はまだ大きい。一方の日本は17位と、一国での改善の余地は限られており、幾つかの日本のレポートでも、日本のSDGsへの取り組みの方向性として、国際協力や海外事業展開などを通じて、インドを含む新興国のSDGs達成に積極的に貢献することがより重要になる、といった指摘がされている[iii]

実際、インドがSDGsに対し、どのような取り組みをしているのか、少し紹介してみたいと思う。

SDGs Indexによる進捗指標の設定

インド政府のシンクタンクであるNiti Aayogは、SDGsの目標に対し、どのように実行し、成功度合いを測定するか、について世界の先駆けとして2018年にベースラインレポートを発表した[iv]。当ベースラインは、インドのすべての州・連邦直轄市における状況を把握し、どう改善が進むのかを、具体的な数値で時系列比較をしていこうとするもので、Niti Aayogが、インド統計局による国家指標フレームワークに従い、38の中央省庁および全州政府・連邦直轄市政府との協議により、設定した指標である。設定された指標数は62であり、SDGs 17項目のうち以下13項目となっている。

                            【インドにおけるSDGs達成の指標一覧】

*1 Gram Panchayat: インド農村部の行政単位

17のパートナーシップ協力を除く3項目については、全州・直轄市で比較可能なデータが入手できないため除外しており、Niti Aayogは、このことがインドの国および州レベルでのデータ収集機能および統計システム開発の必要性を浮き彫りにしている、とも指摘している。

国連も、このインドのIndex設定と発表について、限られたデータ範囲であってもその進捗ステータスに対する評価・洞察が可能であり、今後データの可用性が向上し、新しい推定手法が開発されるなどの改善により、より包括的、かつ範囲を拡大したものに変化していくだろう、と一定の評価を見せている[v]

Indexは、そのスコアにより州・連邦直轄市は以下の4段階に分類される。

各州・直轄市のIndexおよび詳細については、実際のレポートを参照されたい。

「SDG INDIA INDEX Baseline Report, 2018」

企業によるSDGsの取り組み

インドでは、持つものが持たざるものに与える、という行為が根付いているところから、古くから大手コングロマリットを中心に、貧困層等への教育・医療を受ける場の提供や職業訓練、自社工場周辺の環境保全といったCSR活動が展開されており、世界最大級の人口を抱え、政府の財源も限られた中、こういった民間企業のCSR活動が、インドのSDGs目標達成について、大きく貢献しているともいえる。企業のCSR活動は、2013年の会社法改正に伴い、一定資本あるいは売り上げを持つ企業のCSR活動は義務化された。2019年改正法においては、支出額やその用途がより明確に規定され[vi]、さらに2021年1月には、支出規定をより柔軟性を高めたかたちに改正したと同時に、企業にとって代わってCSR活動を行う企業の登録を義務化するなどの改定を行った[vii]。この改定により、企業がCSR活動をより行いやすく、かつその成果が見えやすい形にされた、と報道されており、企業CSR活動によるSDGs推進を促す意図も含まれていることが推測される。

インド工業連盟(CII)は、自身の展開する持続可能な開発のためのセンターオブエクセレンス(CESD)を通じて政府及び民間企業と連携し、Niti AayogのMoUパートナーとしてSDGsにかかわる活動を促進している[viii]。その中で、企業のCSR活動としてのSDGsの取り組みをレポートとして紹介している[ix]

これらの中から、CSR活動をいくつか紹介する。

農業:インドは世界の中でも農業大国のひとつであり、農業従事者が人口の半数を超えるものの、小規模農家が多くを占めており、低収量による農家収入の少なさ、投下できる資本の少なさなど、様々な課題を抱えている。インドでは、地場大手ITCや、外資系のPepsiCo等が、農家収入改善のためのプログラムを実施しており、有機農業や灌漑農業の導入、より土壌に適した新品種の導入の他、持続可能な農業による温室効果ガスや使用水量の削減などを実現している。

水資源・エネルギー:世界最大級の人口に加え、続く人口増で中国の人口を超えて世界第一位になる、と予測されているインドでは、水資源・エネルギー資源の確保も重要課題である。単に資源を確保するだけでなく、持続可能な仕組みの導入も行われており、デンマークの水技術企業であるGrandfosは、浄水システムと供給する水ATMを導入、水はATMからスマートカードを利用して購入する仕組みになっており、その運営をローカルコミュニティに実施させ、収入源の創造にもつながっている。同様の仕組みを、太陽光を用いた再生エネルギー企業のRenew Powerも提供しており、設置したソーラーグリッドの運営をコミュニティに実施させている。

上記のように、CSR活動の中でも「持続可能な」循環を小規模なコミュニティで実現していくことで、SDG全体の底上げを行っていこう、とするものが注目されているように見受けられる。ここで紹介したものはごくわずかであり、その他に数多くの活動が行われている。これらを参考に、SDGsの改善のパートナーとしてのインドの可能性を考えるきっかけになれば幸いである。

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