コラム

インドのヘルスフード市場~健康志向や免疫力向上への関心の高まりから高い需要で推移~

Published on
Apr 10, 2023
  • Avendus Capitalは先月、健康食品に関する市場レポートを発表した。当レポートの推計によると、インドおける健康食品・飲料の一人あたり支出は、2026年までに2倍になる可能性があり、その市場規模は今後5年間に年成長率20%で拡大し、300億米ドルにまで伸長する、と予測されている。
  • 同市場は、2020年においてパッケージ食品・飲料市場の11%を占めていたが、2026年にはこのシェアを16%にまで拡大することが予想されている[i]
  • 健康志向をもつ消費者数も拡大しており、2020年の1億800万人から6,800万人増の1億7,600万人に増加すると推計されており、最も大きな市場シェアを占めるビスケット、フルーツスナック、スナックバー、トレイルミックス(グラノーラ、ドライフルーツ、ナッツなどを混ぜたもので、ハイキングの際に携帯する食品として開発されたもの)などのスナックカテゴリーで大幅な成長がみられ、それに健康乳製品が続く。
  • レポートによると、健康な食生活への移行は、COVID-19前から進んできてはいたものの、パンデミックによる世界的な健康志向の高まりから、その傾向は加速している。インドで依然人気の高い炭酸飲料や塩分や油分の多いスナックへの嗜好は続くものの、一部のトレンドに敏感で、デジタル親和度の高い都市部の若者層や、可処分所得の多いアッパークラスを中心に、より健康的な食材への関心や利用が増加してきている。当レポートでも、70%のインド人がパンデミック後に食生活の変更による健康改善に注目している、と指摘している。
  • また、新たな健康食品ブランドの登場、大手食品メーカーによる健康食品への参入などが、消費者の選択肢を広げ、興味関心を促進することに貢献したと同時に、ECの普及、またパンデミック以降増加しているD2Cが、スタートアップなどが手がける新興食品ブランドの参入障壁を押し下げているという。
  • 現在、これら市場は大都市部中心となっており、そのシェアは40%を占めるが、将来的には中小規模都市にも拡大・浸透していくとAvendusは予想している。

次々に資金調達を実行するスタートアップ

  • 健康食品関連のスタートアップによる資金調達も、複数とりあげられている。その業態も多様化しており、様々な方向性で食の健康への取り組みに広がってきている。
  • Living Foodは、2018年にバンガロールで創業された、地元産の農作物を収穫日に消費者に届けるクイック配送サービスを展開するスタートアップだ。2022年1月、シリーズAラウンドで270万米ドルの資金調達を行った。取扱商品は、果物、野菜に止まらず、焼きたてのパン、スプレッド・ソース等の加工食品、コールドプレスオイルなど、素材や原料にこだわった商品であり、700を超えるSKUを展開している。2022年にはムンバイでもサービスを開始、投資金調達により技術・ロジスティクスや都市・ブランド拡大を行っていく。[ii]
  • 2022年3月、D2Cのオーガニックスナックを展開するスタートアップEat Betterがシードラウンドで5,500万ルピーの調達を実現した。同社は2020年8月、ジャイプールにて母と息子により設立されたブランドで、100%天然素材、人工甘味料や着色料などを一切使っていないスナックを製造・販売している。過去18ヶ月で収益を10倍以上に拡大した[iii]
  • 健康食品・サプリメント等を含むウェルネス製品販売のオンラインプラットフォームを手がけるGetsApp[iv]も、設立間もない2022年7月、シードラウンドで9,500万ルピーを調達した。同社の提供するプラットフォームでは、AIにより購入履歴がパーソナライズされ、新たなサプリメントなどの提案等を実現するという[v]
  • バンガロール拠点の健康食品ブランドThe Whole Truth[vi]は、2023年1月、Sequoia Capital Indiaが主導するシリーズBラウンドで、1,500万米ドルの資金調達を行っている。同社は2019 年にUnilever の元マーケティング担当者Shashank Mehta氏によって設立され、砂糖や防腐剤を含まないエネルギーバー、ナッツバター、チョコレート、ミューズリーといったヘルシースナックをラインナップとし、自社サイト、クイックコマースプラットフォーム、小売店を通じて販売している。同ブランドは2021年7月にシリーズAで600万米ドルを調達し、以来規模を7倍に拡大、10都市以上への展開を実現している。[vii]
  • 健康的な家庭料理を提供し、心と身体両方に栄養と健康を与えたい、というフードデリバリーも登場し、資金を獲得している。チェンナイを拠点とし、現在コインバトール、マドゥライなど南部12都市に展開するCookr[viii]は、2023年2月、プレシードで100万米ドルを調達した。同社は2022年に設立、栄養価が高く衛生的な家庭料理を、登録ホームクッカーによる500種類以上のメニューを提供することで、顧客の多様な食事ニーズと好みに対応する仕組みをプラットフォーム上で構築している[ix]
  • いずれも創業間もない時期に、比較的大規模な資金調達を実現しており、健康食品や関連サービスへの関心度の高さがうかがえる。

大手FMCメーカーの健康食品参入

  • 大手食品・FMCGメーカーも、健康食品への取り組みを強化している。2022年2月、インドのFMCGブランドDaburは、健康スナック分野への参入を発表した。新たな健康スナックブランド名は「Real Health」とされ、チアシードやパンプキンシードの投入から開始される[x]
  • 健康スナックブランドの買収により、参入を図る大手地場企業も見られる。FMCG大手のMarico は、2022年5月に、高食物繊維・高プロテインのシリアル・ドライフルーツを手がけるヘルスフードメーカーTrue Elementsを買収[xi]。パッケージフードを中心に展開するITCは、2023年1月、栄養バーを展開するD2CブランドスタートアップYoga Barを買収する計画を発表。今後3-4年をかけ、完全子会社として傘下に置く計画だ[xii]

政府は健康食品の環境整備の方向へ

  • 政府も、健康食品の需要や種類の増加に対応しようとしている。インド食品安全基準局(FSSAI)が2020年に発表した「インド食品安全基準 (ラベル表示および表示)規則 2019」をみると、新たに、栄養強化食品とオーガニック商品には、指定されたロゴの添付が必要となった[xiii]
  • また、2022年11月には、いくつかの健康食品に関する新たな草案が発表されており、その対象はHealth Supplements(健康補助食品), Nutraceuticals(栄養補助食品), Food for Special Dietary use(特定用途向け食品), Food for Special Medical Purpose(特定医療目的食品)Prebiotic and Probiotic food(プレバイオティクス及びプロバイオティクス食品)となっている[xiv]
  • 2022年2月には、健康スターレーティング(HSR)ラベル導入を行うことが発表され、9月にはその草案が公表されている。塩分、糖分、脂肪の含有量に基づいてパッケージ食品を1~5個の★の数でランク付け、パッケージに表示することで、消費者の選択を容易にする、というものだが[xv]、その草案内容については、消費者に誤解を与えかねない、などの批判も相次いでおり[xvi]、今後の動向が注視される状況だ。
無料メールマガジン登録
市場調査レポート、コラム、セミナー情報をお届けします。
個人情報の取扱についてプライバシーポリシー
無料メールマガジンの登録を受け付けました。
Oops! Something went wrong while submitting the form.

← 前の記事へ

これより前の記事はありません

次の記事へ →

これより新しい記事はありません

CONTACT

サービスに関するお問い合わせ、
ご相談はこちらからご連絡ください。

サービスに関するお問い合わせ、ご相談はこちらからご連絡ください。

Top