コラム

インド空気清浄機市場~大気汚染30都市中21都市がインド、低価格が強みのスタートアップも台頭~

Published on
Mar 4, 2020

市場規模インド商工会議所連合会(Assocham)と印リサーチ会社Tech-SciResearchの発表によると、インドの空気清浄機市場は2017年時点で1,414万米ドル規模。うち22%は一般住宅需要という。年成長率29%で伸長し、2023年には3,899万米ドルに到達する見込みだ。大気汚染による健康への影響への懸念や、健康的なライフスタイルへの志向・健康意識の高まりが相まって市場をけん引している。特に大気汚染の深刻なデリーNCRを中心とするインド北部での需要が特に高まっているという[i]

インド空気清浄機市場規模推移(単位:百万米ドル)】


市場動向
IQ Airとグリーンピースが発表した「World Air Quality Report 2019」によると、世界で最もPM2.5の高い上位30都市のうちインドが21都市を占めているという。最も高いガジアバードをはじめとする上位10位に含まれるインドの都市はいずれもデリーNCRに位置する[ii]

                                                                                                           【PM2.5の高い都市ランキング】

ボストンのHealth Effects Institute発表の「State of Global Air Report 2019」によると、2017年に大気汚染により死亡したインド人は120万人に達した、という[iii]

2019年11月、デリーは近年で最悪の大気汚染に見舞われ、デリー当局はデリー首都圏での乗用車のナンバープレートによる通行規制や、学校の休校、建設の禁止等を行った[iv]。この時期、空気清浄機メーカーの売上も大きく上昇し、各メーカーの10~11月の売上はいずれも2桁成長を見せたという。Philipsは、一年前からの売上が60%伸長し、シャープはこの2か月間で1万5千台を販売した。販売の中心はインド北部で、売り上げが半数以上を占め、大気汚染の激しいデリーNCRが筆頭であるが、近郊のラクナウ、カンプールでも売り上げを伸ばしている。近年では、南部のケララ州、北東部インドでも売り上げが伸びている[v]。その一方で、品質についての警鐘を鳴らすメーカーもある。空気清浄機メーカーの大手のひとつであるBlue Starの担当者は、空気清浄機についての業界基準や品質規定がないことを指摘、ヘルスケア製品としての業界標準や規定を設ける必要がある、と語る。

企業動向
インドには数多くのメーカーが空気清浄機を手掛けており、Philips、Godrej、LG、Panasonic、Sharp、Xiaomi等の家電メーカー以外にも、浄水器などを手掛けるEureka Forbes, Kent、空調システムのBlue Star、Honeywellなど、多方面より参入が進んでいる。下記に空気清浄機業界に関わる主要な企業を数社挙げる。

・Philips India [vi-1] [vi-2] [vi-3]
インドでは8モデルを販売している。価格帯は1万6995~3万9995ルピー(2020年3月2日時点)。主要モデルの「3000シリーズ」は、同社の最新技術により、空気中の0.3ミクロン以上の汚染物質を99.97%除去できるという。95平方メートルの部屋サイズまで対応可能。欧州のアレルギー研究機関ECARFの実証実験でも検証されている。Philipsはインド市場に1930年代に参入、空気清浄機の発売は2014年から開始。2016年度にはインド事業におけるグループ売上高が10億米ドル(約702億5890万ルピー。家電事業などのPhilips Indiaが369億8870万ルピー、照明事業のPhilips Lighting Indiaが332億7020万ルピー)に達している。特に医療用診断画像機器事業、空気清浄機事業などがけん引したという。

・Xiaomi India [vii-1] [vii-2] [vii-3]
インドで展開しているモデルは現在2種類。2016年9月に先行モデルをリニューアルし、「Mi Air Purifier 2」の発売を開始。現在は「2C」(6,499ルピー)、2019年11月に「3」(9,999ルピー)を発売開始(価格は2020年3月2日時点)。製品サイズは40%小さくなり、世界基準のCADR(Clean Air Delivery Rate、きれいな空気をどれだけ供給できるかの値)は1時間当たり380立方メートル。480平方フィートの部屋サイズまで対応可能。PM2.5濃度によるAQI(空気質インデックス)が3段階の色で表示される。Wi-fiモジュール付きで、携帯端末のアプリケーションからリアルタイムでのデータ管理、コントロールが可能。

・Sharp Business Systems(India)[viii-1] [viii-2] [viii-3] [viii-4]
インドでは蚊よけ機能付き空気清浄機、車内用空気清浄機など、様々な付加機能を持つモデルを、商用を含め19モデル販売している(2020年3月2日時点)。全てのモデルに同社の最新技術プラズマクラスターと静電HEPAフィルターを搭載。空気中の99.97%の汚染物質を除去できるという。世界各国28機関の実証実験および認証を取得しており、インドではインドぜんそく協会(Asthma Society of India)とインドエネルギー資源研究所(TERI)から認証を受けている。また、2017年12月には米国の情報機器ディストリビューター大手Ingram Microと提携、インド国内1万6000店舗に全モデルを販売する。2019年3月には加湿機能付きの空気清浄機(33,000ルピー~)を、同年8月には除湿機能付きの空気清浄機(35,000ルピー~)を投入と、製品群を増やし、インドでの販売拡大を図る。

・Panasonic India [ix-1] [ix-2] [ix-3]
インドでは空気清浄機8モデルを販売している(2020年3月2日時点)。HEPAフィルターによる空気中のPM2.5等の微小粒子状物質除去だけでなく、同社のナノイー技術を用い、菌やウイルス、アレルゲン除去にも対応。2018年3月には、空気清浄機能付きエアコンも発売。金額は39,000~72,000ルピー(発売当初発表)。当エアコンにもナノイー技術が生かされ、エアコンの冷却機能がオフになっていても空気中のウイルス、バクテリアの成長を抑制、室内のホコリや粒子の除去が可能という。

現地消費トレンド
様々な空気清浄機が登場しているものの、いまだ価格帯は高く、もっと安価に提供することを目的に活動するスタートアップも登場している。Smart Airは2013年に北京にて、中国の大気汚染に衝撃を受けた当時学生だったThomas Talhelmにより立ち上げられ、デリー進出は2015年。DIYキットによる組立で、1台3,500ルピーと、低価格の空気清浄機の1/2の金額を実現した。[x]2019年3月、フードデリバリー大手のZomatoは、同社の空気清浄機を自社グルガオンオフィスに91台導入。同オフィスは2018年12月に新たに設立され、オフィス新設~入居の期間が非常に短く、周辺の大気汚染問題に加え、を内装施工後の塗料や接着剤などから揮発性有機化合物等の影響の問題にも直面し、空気清浄機の導入に至ったという[xi]。デリー拠点のスタートアップNanoclean[xii]は、2017年に「Nasofilter」という鼻に接着して使うフィルターを投入。価格は10ルピー。2019年にはエアコンを空気清浄機に変える「Nanoclean AC Filter」を399ルピーで発売を開始した。

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