コラム

インドの美容家電市場~ヘアケア製品が6割、女性だけでなく男性の美意識も向上で市場も多角化~

Published on
Oct 8, 2018

市場規模

美容家電市場は導入期の段階にあり、GfKの調査(2014年発表)によると、2013年のインドにおける美容家電の市場規模はおよそ6,700万米ドル(約48億6,000万ルピー)、美容・健康全体の市場規模412億2,400万ルピー(2013年)に対し約10%の規模である(注1)
しかしながら市場は伸長しており、Research & Marketのレポート(2018年6月発行)によると、2011年度から16年度にかけ年平均16%で伸長、2023年度には250億ルピー(約3億4,500万米ドル)にまで拡大する、と予測されている(注2)

市場動向

Research & Marketのレポートによると、美容家電市場の中心はヘアケア製品であり、市場全体の6割を占めるという。メーカーはPhilips, Panasonic, Havellsで約40%を占める。
前出のGfK調査によると、2013年度の総販売台数はおよそ300万台であり、美容家電の中でも、電気シェーバーとヘアドライヤーの売り上げが、顕著に上昇した(電気シェーバーは前年比51%増、ヘアドライヤーは前年比10%増)。とりわけ、電気シェーバーは美容家電の販売台数の39%と大きなシェアを占めており、前年よりおよそ40万台の増販とその伸びも顕著である。こうした商品の売れ行きは祭日、そしてバレンタインデーといった特別な需要時期の他、モンスーンの期間にも上昇する傾向にあるという。また、これら美容家電はショッピングモールのようなモダンリテールで購入される傾向が強く、2013年の美容家電の購入場所は、モダンリテールが4割以上を占めたという(注4)
そもそも、インド人は伝統的に美容への意識が高い傾向にある。日本人にもなじみ深いヨガをはじめ、インドには古来より健全な肉体と精神を維持するための実践が存在する。こうした文化的風習に加え、ボリウッドといったソフトパワーを通して、若者たちを中心に美容への関心が一層高まっているのが現状である。さらに、これら若者層の所得向上が、高価格帯の美容家電市場をけん引する鍵となるだろう(注5-1)(注5-2)

企業動向

・Panasonic India(注6-1)(注6-2)
Panasonicは2013年に、当時およそ25%のマーケットシェアを獲得していたインドの美容家電市場において、同マーケットシェアを30%に拡大することを目標として、女性向け美容家電の投入を開始した。その後も製品ラインアップ拡充に取り組んでおり、2018年9月の時点で、女性用美容家電製品ラインアップは、電動シェーバー・エピレーター7点、ヘアドライヤー11点、ヘアストレーナー3点、角栓クリーナー1点、ヘアスタイラー5点、フェイシャルスチーマー1点、その他美容家電3点、計31点となっている。Panasonic Indiaの家電部門長のSuresh Kumar Bandi氏(2013年当時)は、美容家電市場における同社の取り組みについて「今日の女性は常に新しいものを試し、自分たちを美しく見せたいと望んでいる。彼女たちは、その願望を実現する解決策を望んでおり、Panasonicは価値あるイノベーションを彼女たちに提供することができる。新たな製品ラインアップは、絶え間なく進化する消費者のニーズを反映したものとなっている」と述べた。

・Philips India (注7-1)(注7-2)
Philips Indiaは、2010年に美容家電の製品ラインアップと販売チャンネルの拡充を宣言している。その後、同社の美容家電の売り上げは着々と伸びており、2009年におよそ16億5000万ルピー(同年売り上げ330億ルピーの5%から計算)だった売り上げは、2015年に37億2500万ルピーに、2016年には47億8100万ルピーにまで上った。同社は、男性用シェーバーの販売にとりわけ注力しており、2015年には男性用シェーバーのPhilips Pro Skin Trimmer-BT1000を、2016年には旅行用の携帯シェーバーとしてPhilips Norelco PQ208/40の販売を開始した。また、2016年には従来のフェースシェーバーに加え、全身剃毛用のボディーシェーバーという新しいセグメントも投入している。

現地消費トレンド

男性向けの美容家電市場に注目が集まっている。ユーロモニターインターナショナルによると、2016年のシャンプーや香水等を含めた男性用美容商品の市場は、およそ530億ルピーであり、成長率は前年比11%増であった。こうした成長の背景には、男性の美容意識の高まりがある。Philips Indiaの調査によると、72%の女性が胸毛をしっかりと処理している男性を好み、65%の女性が、体毛が丁寧に処理されているかが恋人や配偶者を選択する上で重要だという。このような女性の選好を受けて、男性の美容意識がさらに高まってきているのが現状である。Philipsの男性向け美容商品の売り上げの35%は地方が占めていることから、男性の美容意識は都市部にとどまらず、地方にも広がりつつあることが分かる(注8)。一方、女性のヘアスタイリング家電も急速に伸長している。結婚式など特別な機会だけにとどまらず、普段の手入れの一つとしてヘアスタイラー、ストレーナー、カーラーなどは、都市部の女性を中心に取り入れられ始めている。生活水準が上昇し、ファッショントレンドへの注目度がより高まり、映画やファッションショーなどで取り上げられる最新のヘアスタイル等の影響が、売上に貢献しているという。一説には美容家電への消費金額は年平均1万ルピーともいわれ、インドの代表的な美容ECサイトであるNykaaでも美容家電を販売、500ルピーの携帯用から、1万ルピーを超えるプロ仕様に近いものまで幅広く売れるという。Nykaaによると、2016年度にはよりニッチな分野であるヘアアイロンやカールドライヤーが前年比400%と爆発的に伸び、ドライヤーやカーラーなど、従来品の5倍ほどする価格の商品にシフトしている、という。また、これらの中でも特にコンパクトで携帯できる商品へのニーズが高まっており、旅行先や結婚式の会場に持っていくだけでなく、仕事場の会議前や仕事が終わった後の外出前に使用するなどの用途にも使われるという。Philips Personal Healthのseniorディレクターによると、より教育を受け仕事に就く女性が増え、核家族化が進むことにより、女性の役割が多様化していることと、単なるうわべの美しさではなく、内面の美しさや自信を表現する方向にシフトしており、ヘアスタイルは女性の自信や自己表現に重要な位置を占めるようになってきた、という(注9)。Panasonic、Philipsはともに、今後、男性向け美容商品の販売により一層注力していくと発表している。女性の自身に対する美容意識も高まっており、これらを背景として男女ともに美容家電の普及が進んでいくことが期待される。

Philips Indiaは男性用、女性用の美容家電ラインアップを拡充している(写真提供:infoBRIDGE社)
無料メールマガジン登録
市場調査レポート、コラム、セミナー情報をお届けします。
個人情報の取扱についてプライバシーポリシー
無料メールマガジンの登録を受け付けました。
Oops! Something went wrong while submitting the form.

← 前の記事へ

これより前の記事はありません

次の記事へ →

これより新しい記事はありません

CONTACT

サービスに関するお問い合わせ、
ご相談はこちらからご連絡ください。

サービスに関するお問い合わせ、ご相談はこちらからご連絡ください。

Top