インドでは10月から11月にかけてディワリと呼ばれるヒンドゥー教の祭りが行われます。太陰暦のため毎年時期は変わり、今年は10月末~11月第1週でした。「光の祭典」という名の通り、筆者が住んでいるデリーでは住宅からオフィスまで色鮮やかな電飾に囲まれてインドらしい光景を見ることができました。このディワリはヒンドゥー教の新年を祝う祭りでもあり、贈答品や新たな年に向けての買い物など、消費が最も活発になる時期として、多くの企業はディワリシーズンを重要視しています。ディワリシーズンになると、小売業では家電、衣料品、宝飾品の需要が高まり、オンラインを中心にセールスが活発化しています。特にAmazonやFlipkartなどの大手ECサイトでは「ディワリセールス」と題した大幅な割引が行われます。また、自動車業界ではシーズンに向けて新作の予約販売が始まるほか、車両保障や6か月分の充電無料など、多様なインセンティブを用意することで、価格に敏感なインド人に購買意欲を掻き立てています。また繁栄と幸運を重要視する文化から、不動産の売買も盛んになるといわれています。
IBEFの予想によると、2024年のディワリシーズンの売上は4兆2500億ルピー(約7兆7466億円、1ルピー=1.82円で換算)の見込みであり、その内デリー首都圏のみで7500億ルピー(約1兆3665億円)の売上が予想されています。
コマースメディアのCriteo社のレポートによると、商機となるディワリ前の2週間のオンライン売上は、昨年と比較して平均で14%増加していると報告されています。オンラインショップの商品説明ページ全体のトラフィックは2024年9月と比較して42%もの増加を見せており、ユーザーは約1か月前からディワリに向けた商品購入を検討しており、当日に近づくにつれて商品の購買を決定している傾向があると考えられています。
部門別ではファッション類の売上高が昨年比42%増で消費財が13%増という結果になりました。特にディワリを彩るオーナメントやライトの売上は昨年比204%と高い数値を記録しています。続いて、キャンドル(122%増)、食器(89%増)が好調であり、ファッション類ではコートとジャケットが昨年比154%増を記録し、祭りのときに着用するサリーは78%の増加を見せました。
最大の商機となるディワリシーズンに合わせて各企業は多様なアプローチで消費者の自社製品をアピールしています。
1.「つながり」に着目したプロモーション
ディワリシーズンは多くのインド人が地元に戻り、家族との大切な時間を過ごします。そんなディワリに向けて多くの企業は「つながり」がコンセプトのビデオ広告を製作しています。菓子メーカーのCadburyは、鉄道のチケット販売を行うIRCTCとのコラボレーションによって「遠く離れた親に会いに行く若者」のためにチケットをプレゼントするキャンペーンを行っています。また、NETFLIXはプロモーションビデオの中で動画コンテンツを通じて家族や友人が一つになる様子を表現しています。毎年多くの企業が「つながり」というコンセプトでプロモーションを行っています。
2.「ディワリ×新商品・技術」に着目したプロモーション
ディワリシーズンのプロモーションの傾向である「つながり」「祭り」といったテーマに触れながら、新商品や新技術のアピールを行っている企業も見られます。SAMSUNGは新商品「AI TV」を使って離れ離れになった家族が再び繋がるというメッセージを伝えています。Google Shoppingは同サービスを用いることで、価格帯やカラーなどの違いをまるで「魔法」のように比較している様子を遊園地のような世界観で表現していました。
3.「女性のエンパワーメント」に着目したプロモーション
近年見られるディワリシーズンのプロモーションの中には、女性の活躍をフィーチャーしたものも見られます。エスニックアパレルブブランドのSabhyataは会社を変えようと奮闘する現代の女性に寄り添う内容になっています。パイプメーカーのFinolex Pipesはヒンドゥー教の神様ラクシュミーと働く女性を重ね合わせ、女性の自己実現をサポートする内容となっています。
ディワリシーズンを一過性の商機と捉えるだけでなく、メッセージ性のあるコンテンツを制作することによって、ユーザーと製品の繋がりを深くする機会だと捉えている企業も多いのではないでしょうか。
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