コラム

インドメディア&エンターテインメント市場~ 市場は堅調に伸長する中、デジタル広告、アニメ、VFX、ゲームが大幅に伸長~

Published on
May 10, 2019

市場規模

インドのメディア&エンターテインメント市場規模は、2018年度で前年比10.9%で1兆4,360億ルピー、今後も堅調に規模を拡大、年率13.1%で成長し、2023年には2兆6,602億ルピーに到達すると予測されている。メディア消費も2012-18年の間に年平均9%で伸長、これは中国の約2倍、アメリカの約9倍であり、同業界従事者は直接・間接雇用も含め350万~400万人とも言われている。[i]

オランダの大手会計事務所KPMGとインド商工会議所連合会(FICCI)の共同調査によると、メディア&エンターテインメントの内訳(2016年)はテレビ47%、紙媒体24%、映画11%、デジタル広告6%、アニメ・ビジュアルエフェクツ(VFX)5%、ゲーム2%、街頭広告(OOH)2%、ラジオ2%、音楽1%となっている。市場の約半分をテレビ市場が占めているが、前年比伸び率で見ると最も高いのはデジタル広告で28%、アニメ・VFXで16.4%、ゲーム16.2%、ラジオ14.6%と続く。[ii]

                                                                                                                                               【市場規模内訳(2016年)】

当レポートでは、主にアニメ・ゲーム市場を取り上げる。

市場動向―アニメ市場

近年のトレンドとしては、短編アニメの創作が増えている。2016年には「Schirkoa」がインドで制作された短編アニメとして初めてオスカー賞の「最優秀短編アニメ賞」を受賞した。2015年前後より、インド発短編アニメのフィルムフェスティバルへの出展は増加している。

しかしながら、インドは映画大国としては知られているものの、アニメ映画が占める割合は決して高くない。また、映画館で上映されるアニメ映画もほとんどがハリウッド映画だ。インドでも人気を博した「KUNG FU PANDA 3」の制作費用は94億ルピーと莫大で、インドアニメ映画の制作費はそれには及ばない。また、ハリウッドアニメ映画のターゲットが子ども・大人を問わず家族に受け入れられている一方で、インドアニメ映画は0~14歳の子どもにターゲットが限定されている。限られた予算と平凡なストーリーのため大人の集客ができていないのが現状だ。

インドは、アニメ産業の人材育成、教育設備整備などを官民共同で行っていく必要があり、マハラシュトラ州、カルナタカ州、テランガナ州は独自の政策を発表し、州内にアニメ産業に特化した産業集積地を新設するなどの動きもある。[iii]

また、インド国内では幾つかアニメーションフェスティバルが開催されている。ウッタル・プラデシュ州ラクナウに拠点を置くCMS International Children’s Film Festival(以下、ICFF)は、毎年子どもに特化した映画祭「ICFF」を開催している。2019年4月に開催された第11回「ICFF」におけるアニメーション部門では、ショート部門でアメリカが、フィーチャーフィルム部門でロシアが大賞を受賞した。[iv]

ウッタル・プラデシュ州ノイダに拠点を置くWave Silver Towerは、2016年12月に第2回「India International Animation and Cartoon Film Festival(IIACFF)」をデリーで開催した。このイベントは、アニメ系の学校における履修推進を目的としており、アニメ業界の第一線で働くプロフェッショナルと学生をつなぐ場としても活用されている。[v]

市場動向―ゲーム市場


インドのオンラインゲーム市場は2018~23年度まで年平均22%で伸長し、2023年度には1,190億ルピーにまで達すると予測されている。[vi]

インドのゲーム市場で近年注目されているのは携帯電話を使用したモバイルゲームだ。インターネットを利用できる携帯端末の普及およびインターネット環境の改善により、モバイルゲームは従来の「高く時間の無駄」というイメージから「手軽で便利」なものとして急速に受け入れられてきている。

2016年の携帯ゲームダウンロード数は16億件と前年比58%増で、無料ゲームが多いものの、今後はアプリ内課金などのシステムにより有料ゲームも広がっていくとみられている。市場の大半を占めるカジュアルゲーム(簡単な操作で短い時間で楽しめるゲームの総称)では、市場規模308億ルピーのうち160億ルピーとなっている。中でも多くダウンロードされているゲームはレースゲームおよびアーケードゲームだ。インド国内開発のものは、それぞれダウンロード数トップ10のゲームのうち一つ、収益の高いトップ10のゲームのうち三つとなっており、今後成長が期待できる。[vii]

国内開発ゲームの成功事例を挙げると、インドのゲーム企業Octroはオフラインで有名だったポーカーゲーム「Teen Patti」をモバイルゲーム化したところ爆発的に人気を呼び、ユーザー数は3,200万人に達した。英語だけでなく、インドの地方言語のサポートも取り入れたことがユーザー数を伸ばした鍵だったという。また、ボリウッド映画とゲームとの連動もヒット要因の一つだ。インドのアクション映画「Sultan」の公開後1週間、同名の関連ゲームのダウンロード数はトップチャートにランクインしていた。同様にアニメ映画「Chhota Bheem」、アクション映画「Doom3」などのモバイルゲームも、映画の人気に比例して多くのユーザーを獲得している。

なお、インド国内にはアニメスタジオがおよそ300カ所、VFXスタジオは40カ所、ゲーム開発スタジオは85カ所あり、約1万5000人が従事している。こうしたスタジオが横の連携を強めることなどで、インド文化に特化したゲームの国内開発力の増強が期待されている。[viii]

2017年1月、インド政府は、インド初の世界レベルのトレーニングセンター「the National Centre of Excellence for Animation, Gaming, Visual Effects and Comics industry」をムンバイに設立することを承認した。ゴレガオンのフィルムシティーの敷地内に設置される予定で、その規模は20エーカー、総費用は20億ルピー。当センターはインド情報放送省とFICCI(インド商工会議所連盟)との共同で設立される予定。[ix]

企業動向

Bandai Namco India[x]
バンダイナムコグループのインド現地法人で、2015年6月設立、ムンバイに拠点を構える。同社は2015年10月に、日系企業として初めてインドのショッピングモール内にアミューズメント施設「namco Oberoi Mall Mumbai(ナムコ オベロイモール・ムンバイ店)」をオープンした。「パックマン」の3DCGアニメ「パックワールド」をモチーフとし、店舗面積は約860平方メートル、大型キッズ遊具やゲーム機などが陳列されている。

ゼロ・サム
2004年創業、京都本社。コンテンツソリューション事業、自動車ITS(Intelligent Transport Systems)事業、道路ITS事業の3事業を展開している。コンテンツソリューション事業では、コミックやアニメーション、動画の制作に当たり、日本とインドの共同チームが対応。日本の技術やノウハウを活用し、インドのコンテンツ制作チームが手掛けることで、高品質を保ちながら費用対効果の高いコンテンツ制作を可能としている。例えばクリケットアニメの制作では、プリプロダクションはインド、プロダクションは日本、ポストプロダクションはインドで行なわれた。2013年4月にはクリケットアニメ「Batu Gainden」を、2014年8月には忍者アニメ「Ninja Nontu」をインドのテレビ局が放映した実績がある。[xi-1] [xi-2]

現地消費トレンド
・日本のソフト文化を広めるための「クールジャパン」関連のイベントが、インド各地で開催されている。その一つが、2012年からムンバイで毎年開催されている日本の魅力をインドの消費者へ紹介する「クールジャパン・フェスティバル」だ。日本の食や文化、家電製品や日用品などさまざまな製品や技術を広くPRするとともに、日系企業のインド進出や販売拡大の足掛かりを作ることを目的としている。ステージでは、日本のポップカルチャーを紹介するパフォーマンスや日本とインドの文化交流を象徴するプログラムが数多く行われてきた。2017年度は11月にムンバイ、12月にデリーでの開催が予定されている。その他の「クールジャパン」関連のイベントとしては、9月にプネで邦人水墨画家のデモンストレーション、ムンバイで日本語学習者文化祭が予定されている。[xii-1] [xii-2] [xii-3]

・2017年2月、インド初のゲーム産業に特化したイベント「India Gaming Show 2017」がニューデリーで開催された。主催はCII、後援は電子機器・情報技術省。出展数は海外6カ国を含む50社以上、パートナー国は日本、ゲスト国は韓国だった。日本からはセガ、コナミ、スクウェア・エニックス、ナムコといった業界企業が参加。インドでのニーズを探るとともに、バーチャルリアリティー、人工知能といった日本の最新技術も披露した。また、コスプレ大会も行われ、優勝者には東京で開催される東京ゲームショウへの参加が約束された。[xiii]

・2017年2月には、在インド日本国大使館でインドと日本のアニメ・ゲーム文化交流会が行われた。インド工業連盟(CII)のメンバーがゲストとして招かれ、日系ゲーム企業のスタッフや日本文化を学ぶインド人学生たちが、ビデオゲームやコスプレショー、アニメソングのパフォーマンスを楽しんだ。[xiv]

・2019年3月には、在ベンガルール日本総領事館が主催で「コスプレウォーク」を開催。日本アニメのファンらがコスプレ姿で歩道を練り歩いた。2018年に続く2回目の開催で、インド人、在留邦人等約400人が参加、日本文化をPRした。[xv] 同イベントには日本のメディア・コンテンツ制作などを手掛ける株式会社MUGENUPと「マンガプラネット」(株式会社ファンタジスタと大日本印刷株式会社の共同プロジェクト)が手掛けたキャラクターデザインも発表された。同プロジェクトはインド向けコンテンツの共同開発を行っており、インド在住作家による原案ストーリーを基に、日本国内のクリエイターがキャラクタ―デザインをする、というもの。

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