コラム

インドレポート:生活面からの商品・サービス利用の変化

Published on
Dec 4, 2020

去る11月に、インド最大の消費時期と言われるディワリ商戦が終わった。FlipkartやAmazonといった大手ECは、高まるEC需要と前半に落ち込んだ売上の巻き返しに、サプライチェーンを強化、複数銀行との連携での割引オファーなど、様々な手を打って商戦に挑み、10月のメルマガで紹介した「インドモビリティ市場―販売状況と新たなトレンド」では、四輪・二輪の販売回復や、新たな自転車ニーズの高まりを紹介したが、改めて需要の伸びている消費財や販売ルートを取り上げてみたいと思う。

日本でも、外出自粛等で巣ごもり消費が増加、特に4-5月の外食等の営業時間短縮などにより、おうちクッキングの器具やホットケーキミックス等、調理が簡単に行える食材等が売れたと聞くが、インドではどうだろうか。

インドでは、ロックダウンが開始された4月以降、生活家電の売上が好調だった。7月のFinancial Expressの記事によると、パナソニックは掃除機の売上が新型コロナウイルス前の20%増、電子レンジ、洗濯機が44%増加、地場大手家電メーカーのGodrejは、6月の電子レンジ売り上げが前年比2倍、食洗機については5倍にも上ったという。ドライヤーなどのパーソナル家電カテゴリーについては、パナソニックは新型コロナ前の5倍の売上、Philipsは40-50%増と、各社大幅に売り上げを伸ばした[1]

2010年にインド参入した独Bosch系列の生活家電メーカーBSH Home Appliance(以降BSH社)では、食洗機の需要が倍増、洗濯機、乾燥機の需要も増加、ハイエンドのミキサー、グラインダーも伸びているという[2]

この背景には、他国同様家で過ごす時間が増え、家事等の手間が増えた、ということもあるが、インドでは中間層以上など、ある程度収入があればメイドやサーバントを雇用することが多いが、新型コロナ感染への恐れから、彼らを雇わずに自身で家事をするようになったことや、衛生観念の変化が、これら生活家電、特に掃除・洗濯関連の機器の売り上げの伸びに貢献しているようだ。

BSH社では、こういったライフスタイルの変化が特にハイエンドから起こっていると考え、ムンバイに独高級家電ブランド「Gaggenau」の体験センターを開設する計画があり、ハードウェアだけでなく、洗剤などの周辺商品・サービスも含めた提案型を考えているという。

Ready to Cookセグメントの食品も、一部で大きく売り上げを伸ばしている。インドの日常食であるチャパティ、イドリ、パラタなどのミックス粉、水を入れて作れるパニール(インドのナチュラルチーズ)など、自然・オーガニックを謳った食材をオンラインで販売するiD Fresh Food[3]は、パラタの4-6月売上が前四半期の60%増に、ニチレイが出資する生鮮肉・魚デリバリーのLiciousでは、RTEの肉用スプレッドが3倍増の売上を達成[4]。彼らはフードテックスタートアップだが、以前のフードテックスタートアップの主流はSwiggy, Zomatoといった調理済みフードデリバリー、クラウドキッチン等。外出できないことに加え、衛生観念の変化から、自分で作る安心感を選択する方向にシフト、こういった動きにつながっていることが考えられる。また、オーガニック、自然、トレーザビリティといった、食に関する安全性への意識の高まりもこういった商品・サービスへの志向シフトが関連していると思われる。

その一方で、ホームシェフといった新たなビジネス形態も出てきている。これは、料理が得意な家庭の主婦などがプラットフォームに登録、そこから自分の自慢の家庭料理を販売する、という形態であり、添加物・防腐剤などを使用していない、作り手の見える安心感や、今まで外食やレストランのホームデリバリーを利用していた若者の家庭料理回帰等より需要が増加[5]、ビジネスとしての展開が始まっている。また、新型コロナウイルスの影響で仕事を失った人々が、新たな企業の手段の選択肢の一つともなっている[6]。ホームシェフとして開業するには、インド食品安全基準局(FSSAI)の認可が必要だが、ホームシェフと消費者をつなげるFoodiBuddy[7]、HomeFoodi[8]といったプラットフォームの利用で、大きな投資をせずにビジネスの開始が可能となる。

クラウドキッチンによるホームデリバリーの先駆けであるGhost Kitchens[9]は、女性起業家とのコラボレーションでプロフェッショナルデリバリーブランドを構築しようとしており、複数都市におけるホームシェフのためのブランド構築、テクノロジーおよび標準運用手続(SOP)および資本面でのサポートを行うことを計画している。

かなり食方面の話に触れてしまったが、それ以外にも消費が伸びている商品は数多くある。パーソナル家電に通じるものがあるが、ヘアケア・スキンケアといったセルフケア商品、日本でも同様だが、部屋で快適に過ごせるルームウェア、オンライン会議等のための上半身用フォーマルウェアの他、ビデオコールなどの時に映り込む背景をよくするためのインテリアニーズなどがあげられる[10]。セルフケアでもキーワードはオーガニック、抗菌ケアなどが伸びているという。

ユニークなのは、インドに拠点を置く韓国食品・ライフスタイル商品を取り扱うKorikart[11]。インスタントラーメンの売上が3-4倍増になったことに加え、その他の商品への興味が広がっており、ホーム&キッチンカテゴリーの商品を試す層が増加、グルメ食品やお茶・コーヒー等取扱商品カテゴリーを拡大中という。

新型コロナウイルスの脅威はまだ続く中、こういった消費者の変化を逆にチャンスととらえ、新たな商品・サービスの展開のヒントを数多くつかむことも、ビジネス拡大や展開のチャンスにつながっていくのではないだろうか。

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