コラム

インドのEV市場~累計販売まもなく100万台に到達、EV専業・バイクメーカーに加え新たなプレイヤーも台頭~

Published on
Feb 13, 2023

インドの2022年のEV売上台数は、2022年12月30日時点で99万9,949台にまで到達し、累計AV販売台数は188万台を超えた。特に2021年以降に大きく伸びており、2018年以降3年間は10万台強で推移していたものが、2021年には前年比165.4%増で32万台強、2022年は前年比209.7%と前年比2倍となった[i]

特に上昇著しいのが二輪EVであり、2020年までは3万台未満で推移していたものが、2021年には10万台を超え、2022年には62万2,337台と、指数関数的に増加している。


                                                                                              【カテゴリー別EV販売台数推移】

VahanダッシュボードよりAutocarproが作成した表よりグラフ化

2022年の二輪EVの販売台数を月次で見ると、3月まで上昇していたのが4月に横ばい、5月で落ち込みを見せたが徐々に回復、10月のディワリ(インドの正月。この時期に新たにものを買う習慣があり、各消費財メーカーはディワリセールに注力)の時期には売上を伸ばしている。4月以降の低迷は、バイクのバッテリー火災事故がこの時期に相次いで起こり、安全性に対する不安が高まったことが大きい[i]。この問題を受け、同年9月1日に、インド道路交通省は新バッテリー規則を公布、バッテリー製造、調達、認証までの一連の規則をより厳しくし、1ヶ月より短い期間で新規則に従うよう通知した[ii]。この対応期限は、後に延長され、2段階に分けて到達させるという方向に変更されたが、より高い安全性を保つための安全性チェックや設置間隔の遵守、温度センサーやバッテリー管理システムの導入の義務づけ、など対応すべきことが数多くあり、また高品質バッテリー製造社が不足しており、輸入に頼らざるを得ないなど、コスト増の要因もあり、これらが各社の状況により、売上への様々な影響があったことがうかがえる。

                                                                                          【2022年の月別EV二輪売上推移[iii]

2022年の二輪EVの売上を、ブランド別に見たのが下表である。トップはOla Electricで10万台を超え、それにほぼ同数でOkinawa Autotechが並んでいる。Olaは2021年よりEV二輪の生産を開始、同年8月から発売を開始しており[i]、2022年4月にトップとなったが、その後Okinawa, Ather, Ampereに後塵を拝した。しかしながら、同年10月に発表した、3つめのモデルである「Ola Si Air」は、同社ラインナップの中では最も安価かつ軽量モデルであり[ii]、10月単月売上16,000台を超え、以降同水準の売上を維持し、他社を大きく引き離した。OLAは今年1月の売上で18,270台と単月過去最高売上台数を記録[iii]、好調を維持している。

2位のOkinawaは比較的安定した推移を見せており、4月に11,012台、10月に14,941台を記録したが、以降減速、今年1月は4,453台にとどまっている。OkinawaはHigh speed(時速25km以上)6車種、低速2車種と幅広いラインナップだが、2022/12のMoneyControlの記事によると、同社はFAMEIIに準拠していない、という政府の指摘を受け、補助金を停止させられ、実質購入価格が高額にならざるを得なかったから、という報道もある[iv]。当報道についてのOkinawaのコメントはなく、真偽のほどは定かではないが、補助金により購入価格が大幅に下がるため、制度の適用有無でも売上に影響がある、という一例といえる。

3位のHero Electricは、3月に13,208台を記録し、同月のトップブランドとなったが、5月は2,850台と低迷、その後巻き返し、6,500台~10,000台の間で推移している。

こういった中、これらの影響を余り受けず、2022年後半に右肩上がりに販売を伸ばしているブランドが2つある。Ather EnergyとTVS Motorだ。

Ather Energyは、2022年初頭は1,000-2,000台で推移していたが、8月に5,377台と、5千台を超え、その後右肩上がりの売上が続いており、2023年1月は9,187台と、史上最高の売上台数をたたき出した。Atherは2018年に発売した450をベースに、2020年に450Xに、2022年7月に第3世代となる450X Gen3を発表、バッテリー性能や走行距離の改善(認定航続距離は116kmから146kmに大幅改善)だけでなく、タイヤ空気圧監視システムによる走行性能や安全性維持などにも取り組んでいるようだ。価格は13万9千ルピー(デリー・Exショールーム)[v]だが、FAMEIIの補助金を含めると11万7千ルピー(同)となる[vi]

TVS Motorは、内燃機関二輪の主要ブランドのひとつであり、EV参入は比較的遅く、BajajのEV Chetak(2019年10月発表)の3ヶ月遅れの2020年1月。2022年6月にアップグレードされたiQube発売後、売上台数は順調に伸びており、7月の4,300台から12月には倍以上の8,720台、2023年1月には10,378台にまで増加した[vii]。このアップグレードモデルの認定航続距離も長く、トップ車種で140kmという[viii]。同月に開催された「Auto Expo」では、新たなモデルiQube STを発表している。性能に大きな変化はないが、Atherでも提供しているタイヤ空気圧監視システムや、音声アシストが追加され、若者向けによりすっきりしたモダンなデザインとし、またBluetoothやUSB充電ポート、ジオフェンシング、盗難アラート、ライドモードや音楽コントロールなどがより充実している[ix]

                                                                                           【2022年EV二輪ブランド別販売台数[x]

上記は一連の販売データを通して、そのデータの変化を裏付ける記事を探索してみたものだが、共通点をあげるとすると、じっくり市場に合わせて限定された車種をアップグレードしているブランドが、現状より売上を増やしていることが推測される。価格が多少高くても、FAMEIIの補助金の恩恵を受けつつ、獲得した利益からさらにテクノロジーを投入していこう、というプラスの循環が生まれていくことで、さらなる成長につながっていくことがみてとれる。

さらに車種の特徴などを分析していくことで、各社がどういった方向を打ち出し、それがどう売上に影響していくのか、を理解し、市場戦略の一助にしていくこともできそうだ。

無料メールマガジン登録
市場調査レポート、コラム、セミナー情報をお届けします。
個人情報の取扱についてプライバシーポリシー
無料メールマガジンの登録を受け付けました。
Oops! Something went wrong while submitting the form.

← 前の記事へ

これより前の記事はありません

次の記事へ →

これより新しい記事はありません

CONTACT

サービスに関するお問い合わせ、
ご相談はこちらからご連絡ください。

サービスに関するお問い合わせ、ご相談はこちらからご連絡ください。

Top