先月、筆者はデリー市内への引っ越しを経験しました。新居に必要な家具を探していくなかで、日本でも馴染みのある外資系の家具・インテリアメーカーや便利な家具レンタルサービスなど、多様なサービスがインド国内で展開されていると感じました。今回は日本企業も参入した家具・インテリア市場について取り上げたいと思います。
IBEFによると、インドの家具市場は2022年時点で推定231億2,000万米ドルの規模であり、また、インドは世界で5番目の家具製造国であり、同時に世界で4番目の家具消費国でもあります。市場は年平均成長率10.9%で成長を続けており、2026年には327億米ドルに達する見込みです。
同レポートでは、インド国内における家具需要の増加した主な要因として、都市化の進展、可処分所得の増加、パンデミック以降のライフスタイルの変化があげられています。さらにEコマース市場の拡大も需要を押し上げています。オンラインにおける家具市場は2026年までに利用者は2024年から3倍、顧客一人当たりの支出額は同1.8倍となると予測されています。
インドの家具・インテリア市場には、財閥系企業や日系企業を含めた外資企業、スタートアップなど、さまざまなプレイヤーが存在しています。Godrej Interioは100年以上の歴史を持つインドを代表する多国籍コングロマリット企業Godrejグループの主要部門であり、インドの家具・インテリア業界最大手とも言われています。ホームページ上では、490を超える都市に66の直営店と850を超える販売店を展開していると謳っています。
外資系ではスウェーデン発のIKEAが、2018年に初の実店舗をハイデラバードにオープン。その後、ベンガルールやムンバイへとエリアを拡大しました。デリー首都圏に実店舗はありませんが、3月1日より、デリー首都圏をはじめとするインド北部でオンライン配送サービスを開始しました。同エリアでは実店舗の前段階としてオンライン販売に重点を置いたモデルを採用するようです。今後は2026年はグルガオン、2028年はノイダに実店舗のオープンを予定しています。
2024年12月には、ニトリがムンバイにインド第一号店をオープン。店舗面積は約880坪で、家具や食器など計8,000点の幅広いアイテムをそろえています。インド進出に合わせて、金属製のカレー用ボウルなど地域のニーズに即した商品ラインナップも取り入れているようです。ニトリは2032年までにインド国内で289店舗を展開することを目指しており、どのようにインド市場を開拓していくのか注目です。
次に、インドの家具市場で、成長著しい企業を2社紹介します。
2023年にベンガルールで設立されたFurnishkaは、ベンガルール市内に4つの大型店舗とオンラインショップを運営するオムニチャネル展開の家具・インテリア企業です。2024年10月時点で1,000点以上のSKU(在庫管理単位)を取り扱っています。従来の家具業界が抱えていたサプライチェーンの非効率性を改善し、業界平均よりも安価で製品を提供することが強みだとCEOのガネーシュ・パワール氏は語っています。
月額ベースによる家具のレンタル事業を行うRentomojoは、2014年に創業されたベンガルール発のスタートアップです。2025年4月時点で、同社はインド国内22都市にサービスを展開し、Tier2都市にも進出しています。同社は平均サブスクリプション期間の長さと高いリピート率を同社の強みとし、これが安定した収益構造を支えています。2023年度の営業収益は前年から60%増加した19億3,000万ルピーであるとET Retailは報じました。2024年9月時点で、18か月以内のIPO(株式公開)に向けた準備を進めていると報じられています。筆者も引っ越しの際に実際にRentomojoを使いデスクをレンタルしました。
IKEAやニトリのような外資系インテリアショップの参入や、レンタルサービスの流行から、「何を買うか」ではなく「暮らしを良くするために何を選択するか」という、ライフスタイルと消費スタイルの変化が読み取れます。
プレイヤーが多様化するなかで、いかに差別化を図り、市場において影響力を築けるかが、今後の経営戦略における重要なカギとなるのではないでしょうか。
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