インド政府は、生産連動型インセンティブ(PLI)スキームなどの政策を通じて、国内外から製造業への大型投資を呼び込むことに成功しています。さらに、Eコマース市場の急成長により、インド国内のサプライチェーンの効率化はこれまで以上に重要視されています。今回は、インドの倉庫市場について取り上げます。
倉庫はサプライチェーンを支える主要な推進力の一つです。IBEFのレポートによると、インドの倉庫市場は2022年から2027年にかけて年平均成長率(CAGR)15.64%で拡大し、349億9,000万米ドル規模に達すると予測されています。近代的な倉庫施設やテクノロジー主導のソリューションが導入され、同業界の成長は一層加速しています。ビジネスコンサルティング会社アルバレス・アンド・マーサルによると、2030年までにインドの倉庫の80%以上がデジタル化または自動化されると見込まれており、テクノロジーを活用した倉庫ソリューションは今後の成長を支える重要な要素となっています。
筆者は6月26日(木)27日(金)、28日(土)にニューデリーで開催された展示会「インド国際ウェアハウスショー」を訪問してきました。倉庫テック企業の最新ロボットやソリューションを、撮影した写真を交えてご紹介します。
インド国際ウェアハウスショーは、ニューデリーにあるアジア最大級のMICE(会議・展示会)施設「Yashobhoomi」で開催されました。今回のニューデリー開催で14回目を迎えた同展示会には約300社が出展し、3日間で約15,000人が来場するなど、インド全国から様々な業界関係者が集結していました。
日系企業からはToyota Material Handling India、仕分けモジュールなどを扱う伊藤電機や電設資材などを扱うPanasonic Life Solutions Indiaなどが出展していました。
伊藤電機は、前後・左右・斜め方向へ物資を高速に仕分けできるパワーモーラーソリューションを、パナソニックは産業用センサーやACサーボ(高精度に位置や速度を制御できる交流モーター)など、最新のオートメーション技術を展示していました。
同展示会を運営したRXインドのカントリーヘッドであるウマン・グプタ氏によると、今年は、新たな顧客層の開拓と、自動化ソリューションにおける先進的な機械、製品、技術の展示に重点が置かれているようです。筆者が会場を巡った際にも、自動で物資を運ぶAMR(自律移動ロボット)やAGV(無人フォークリフト)といった最先端技術の展示には比較的広いスペースが確保されており、各企業がこの分野に注力している様子が伝わってきました。今回は、展示会で見られた自動化ソリューションを提供する企業の中から、多くの人の注目を集めていたインド企業2社を取り上げて紹介します。
2018年に創立し、チェンナイに拠点を置くスタートアップのRoboneticsはAMRやAGVを開発しており、倉庫の自動化を支援するソリューションを提供しています。配布された同社のパンフレットには、半導体製造を手掛けるフォックスコンや大手EコマースのFlipkartだけでなく日系の自動車産業や製造業の名前もクライアントとして記されていました。
マハラシュトラ州プネーに拠点を置くArmstrongDematicは、仕分けシステムや自律ロボットなどの自動化ソリューションを提供しています。展示スペースではパレットシャトルが展示されており、ホームページでは特に高密度倉庫において、迅速かつ効率的な商品の積み下ろしを可能にするソリューションとして紹介されていました。
今回の展示会を通じて、インドの製造業や物流業界の最新トレンドを肌で感じることができました。
実際に出展企業に国産化への注力度合」を伺ったところ、3社中2社から部品調達も含め、段階的に国産化の割合を高めていきたいという声が聞かれました。一方で、国産化を進める上で、ロボットに搭載されるレアメタルの調達など、資源のサプライチェーンに関する課題もあげられました。今後もインド企業が自国で物流テクノロジーを更に発展させ、倉庫ソリューションを全土に展開することができれば2030年までにインドの倉庫の80%以上がデジタル化されるという大きな予測も達成することができるのではないかと感じました。
世界的に倉庫テック業界をリードしているのは欧米諸国や日本、中国ですが、今回の展示会では、地場企業から生まれたテクノロジーを直接見ることができ、今後インドの倉庫テック分野もますます競争力を高め、多様なプレイヤーが現れてくるだろうと感じました。その一方で、いくつかの出展企業からは、課題を聞くこともできました。これらの意見はデスクリサーチだけでは得られない企業の声として、筆者自身参考になりました。今回のように展示会に足を運び、さまざまな企業と意見交換を行うことで、インドならではの課題を共有し、新たな連携の可能性を探る貴重な機会になるのではないでしょうか。
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